データ消去コラム
物理破壊だけで本当に大丈夫?
企業が見落としがちなデータ消去の落とし穴
PC・HDD・SSDを廃棄する際に、物理破壊だけでは不十分になる理由と、企業が確認すべきデータ消去・記録・証明の考え方を解説します。
更新日:
読了目安:
12分
対象: 経営者・総務担当者・情シス兼任担当者
企業のデータ消去で重要なのは「壊すこと」ではなく「説明できること」
物理破壊はデータ消去対策のひとつですが、壊した箇所や記憶媒体の種類によってはデータが部分的に残る可能性があります。 企業では、データが読み取れない状態になっていることに加えて、いつ・どの機器を・どの方法で処理したのかを後から説明できる記録が重要です。
「壊したつもり」ではなく、「説明できるデータ消去」へ。
物理破壊だけに頼る前に確認したい3つのリスク
01
データが残るリスク
壊した箇所や記憶媒体の種類によっては、データが部分的に残る可能性があります。
02
記憶媒体を見落とすリスク
M.2 SSD、外付けHDD、USBメモリなど、処理対象から漏れやすい媒体があります。
03
記録が残らないリスク
いつ、どの機器を、どの方法で処理したのかを後から説明できない場合があります。
物理破壊は分かりやすい。しかし「安心感」と「安全性」は別です
PCやストレージを廃棄する際、「壊してしまえば安心」と考えるのは自然な発想です。目に見えて壊れていれば、データが読み取られる心配はないように感じられます。
実際、物理破壊はデータ消去対策のひとつとして有効な場合もあります。しかし、企業の情報管理においては、「壊したから大丈夫」という安心感と、「実際にデータが読み取れない状態になっているか」という安全性は、必ずしも一致しません。
社内でよくある対応
- HDDに穴をあける
- ハンマーで叩く
- PC本体を壊す
- 廃棄台数が少ないため社内で対応する
「壊れている」と「読み取れない」は同じではありません
PC本体や外側の筐体が壊れていても、内部の記憶媒体が無傷で残っていれば、データが読み取られる可能性があります。
物理破壊を行う場合でも、破壊する箇所、記憶媒体の種類、処理後の確認方法によって、データ消去の実効性は大きく変わります。
HDDとSSDでは、適切な処理方法が異なります
企業で使用されるPCには、主にHDD(ハードディスクドライブ)とSSD(ソリッドステートドライブ)の2種類の記憶媒体が搭載されています。この2つは、データの記録方式が根本的に異なるため、物理破壊を行う場合でも、それぞれに適した処理方法を選ぶ必要があります。
HDD
磁気ディスクにデータを記録。
物理破壊ではディスク部分を確実に処理できているかが重要。
SSD
複数のメモリチップにデータを記録。
M.2 SSD、ウェアレベリング、予備領域などに注意。
SSDは「一部を壊せば十分」とは判断しにくい記憶媒体です
SSDはデータの保存場所を自動的に分散する仕組みを持つため、破壊した箇所以外のメモリチップや領域にデータが部分的に残る可能性があります。
特に近年のPCでは、M.2タイプの小型SSDがマザーボードに直接取り付けられているケースが増えています。このタイプのSSDは外見からは分かりにくく、PC内部を確認しないと見落としやすい記憶媒体です。
自己流の破壊では、社内作業の抜け漏れが起こりやすい
社内で物理破壊を行う場合、作業の抜け漏れや記録の不足が発生しやすくなります。特に、複数台のPCを廃棄する場合や、担当者が変わった場合に、以下のような事例が起こる可能性があります。
PC本体は壊したが、内部ストレージが無傷だった
HDDは処理したが、M.2 SSDを見落としていた
外付けHDDやUSBメモリが処理対象から漏れていた
複数台廃棄時に、どの機器を処理したか記録していなかった
見落としやすい媒体
作業した安心感だけが残っていませんか?
自己流の破壊では、作業したという安心感だけが残り、実際には処理漏れや記録漏れが発生している可能性があります。
PC廃棄時のデータ消去を見直したい方へ
社内でPCやストレージを廃棄しているものの、現在の方法で十分か確認したい場合は、専門サービスへの相談も有効です。機器の種類や台数に応じた消去方法のご提案、作業記録の管理、消去証明書の発行まで対応できます。
企業に必要なのは「壊した事実」ではなく「説明できる記録」です
企業の情報管理においては、データ消去を実施したことを後から説明できる記録が重要です。特に個人情報を含むPCを廃棄する場合、適切な処理を行ったことを証明できなければ、監査や問い合わせに対応できません。
外部に渡したから安心、とは限りません
2019年には、自治体が使用していたサーバーのHDDが、リース会社経由で委託された処理業者の従業員によって、破壊前に持ち出され、オークションサイトで転売される事件が発生しました。
この事例は、外部に処理を委託する場合でも、委託先でどのように管理され、処理結果をどのように確認できるかが重要であることを示しています。
記録すべき項目
| 記録項目 |
|---|
| 対象機器 |
| 資産管理番号 |
| シリアル番号 |
| 記憶媒体の種類 |
| 処理日 |
| 担当者 |
| 処理方法 |
| 作業結果 |
| 証明書発行日 |
| 管理番号 |
消去証明書サンプル(記載項目例)
委託先に任せきりにしないことが重要です
個人情報を含むPCや記憶媒体を扱う場合は、委託先に対する必要かつ適切な監督や、取扱状況の把握が求められます。
PC廃棄前に確認すべきチェックリスト
PCやストレージを廃棄する前に、以下のチェックリストで自社の対応状況を確認してください。
| 確認項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 廃棄対象の一覧化 | 廃棄予定のPC、サーバー、外付けHDD、USBメモリなどを一覧化しているか |
| 機器番号の記録 | 資産管理番号、シリアル番号、管理ラベルなどを記録しているか |
| 搭載ストレージの確認 | HDD、SSD、M.2 SSD、eMMCなど、記憶媒体の種類を確認しているか |
| 見落としやすい媒体の確認 | M.2 SSD、SDカード、USBメモリ、外付けストレージなどを確認したか |
| 処理方法の選定 | 記憶媒体の種類に応じて、ソフトウェア消去・物理破壊・磁気消去などを選べているか |
| 作業記録の保存 | 作業日、担当者、処理方法、対象機器を記録しているか |
| 作業結果の確認 | 消去結果や破壊後の状態を確認できる記録があるか |
| 消去証明書の有無 | 消去証明書や作業報告書を発行・保管できる体制があるか |
| 委託先の確認 | 外部委託する場合、委託先の作業内容や管理体制を確認しているか |
| 委託後の証明 | 委託先から作業証明書・消去証明書・廃棄証明書を受け取れるか |
| 保管期間 | 証明書や作業記録を社内で一定期間保管するルールがあるか |
| 廃棄後の流れ | 回収、運搬、廃棄までのルートが明確になっているか |
消去証明書付きサービスをご希望の方へ
消去作業の記録や証明書発行まで対応するデータ消去サービスをご用意しています。対象機器の種類や台数、作業場所に応じて最適なプランをご提案いたします。
よくあるご質問
A: HDDのプラッタ(磁気ディスク)部分に穴をあければ、そのセクタのデータは読み取れなくなります。しかし、穴の位置や大きさによっては、他の領域のデータが残る可能性があります。確実な消去のためには、複数箇所への処理やデータ消去ソフトウェアとの併用が推奨されます。
A: PC本体や外側の筐体を壊しても、内部の記憶媒体(HDD、SSD)が無傷で残っていれば、データは読み取られる可能性があります。データ消去では、PC本体ではなく、記憶媒体そのものへの処理が必要です。
A: SSDとHDDは記録方式が異なるため、同じ方法で破壊すると不十分になる可能性があります。SSDは複数のメモリチップにデータを分散して保存するため、一部を破壊しても他のチップにデータが残る場合があります。SSDに適した消去方法の選定が重要です。
A: M.2 SSDは、小型の基板に直接取り付けるタイプのSSDです。従来の2.5インチSSDと異なり、マザーボードに直接差し込む形状のため、PC内部を確認しないと見落としやすい記憶媒体です。ノートPCや小型PCに搭載されることが多く、廃棄時の確認漏れに注意が必要です。
A: はい。自社で物理破壊した場合も、対象機器、処理日、担当者、処理方法などの記録を残すことが重要です。特に個人情報を含むPCを扱う場合は、適切な処理を行ったことを後から説明できる記録が求められます。
A: 一般的な消去証明書には、対象機器の情報(シリアル番号、資産管理番号など)、消去日時、消去方式、作業結果、発行日、管理番号などが記載されます。これにより、いつ、どの機器を、どの方法で処理したかを後から確認できます。
A: 委託先の作業内容、管理体制、セキュリティ対策、作業証明書や消去証明書の発行有無を確認してください。また、委託後も取扱状況を把握し、必要に応じて監督できる体制を整えることが重要です。
A: まず、廃棄予定のPC、サーバー、外付けストレージなどを一覧化し、搭載されている記憶媒体の種類(HDD、SSD、M.2 SSDなど)を確認してください。その上で、記憶媒体に応じた消去方法を選定し、作業記録を残せる体制を整えることから始めることをおすすめします。
まとめ|物理破壊だけでなく、説明できるデータ消去を
「壊したか」ではなく「説明できるか」を確認する
PCやストレージを物理的に壊すことは、データ消去対策のひとつです。しかし、企業の情報管理においては、物理破壊だけで十分とは言い切れません。重要なのは、データが読み取れない状態になっていること、そしてその対応を記録として残せることです。
記事の要点
- 1HDDとSSDでは記録方式が異なり、媒体に応じた処理が必要
- 2自己流の物理破壊では、処理漏れや記録漏れが起こりやすい
- 3企業では、処理内容を後から説明できる記録が重要
PC廃棄に不安がある場合は、まず自社の廃棄フローを書き出してみることから始めてください。
次回は、データ消去の具体的な方法を解説します
ソフトウェア消去・物理破壊・磁気消去の違いと、それぞれのメリット・注意点を整理します。
PC廃棄時のデータ消去を見直したい方へ
社内でPCやストレージを廃棄しているものの、現在の方法で十分か確認したい場合は、専門サービスへの相談も有効です。機器の種類や台数に応じた消去方法のご提案、作業記録の管理、消去証明書の発行まで対応できます。